ゲーセン裏話 第七話

リクエストをたくさんいただいているゲーセン裏話第七話です。

上海のナゾ

 「上海」というゲームがあります。麻雀牌を対で消してゆくおなじみのゲームです。当店にあったのはMAMEにもある「上海 II」。カウンターのすぐ裏、店長のコラムスの隣にあったのですが、実はこの場所は、店内で一番死角に入るところです。

 みなさんもゲーセンに行くと気づくと思いますが、新作ゲームや大型筐体モノなどは、人の通りが一番多い場所に配置されます。それに比べてこの上海はいかにも場所を埋めるためにあるような感じでした。ところが、私が入ったときからやめるまで、このゲームの売り上げは低すぎず、高すぎずという微妙なラインをキープしていたのです。しばらく働いているうちに気づいたのが、上海シリーズってどこか人生に影のあるというか、疲れた感じの人たちに人気なのです。店に入ってきて、上海だけをやって帰っていく人。夫婦で来たものの、旦那がすっかりメダルゲームにはまってしまい、ほったらかされたジャージ姿の妻がため息混じりにプレー。いかにもうだつの上がらない風のサラリーマンが息抜きにプレー。「ふぅ」とか「はぁ」とか言いながらも、彼らなりにはまっていたりするのが面白いです。

 普通のゲームは一週間の売り上げが大体1000円を切ればサヨナラなんですが、上海についてはいつも3000円くらいなのです。この「上海ヒーリング効果」により疲れた人々を癒やし続けていることが、今でも続編が登場している理由かもしれません。

 プリクラとプライズに占領されている最近のゲーセンとは違い、当時のゲームは大きく4つに分類することができたようです。1つは、置いてあるだけでガンガン稼ぐ客引きマシンで、バーチャIIやカプコンの格闘モノ、大型筐体などです。大型筐体は100万円以上するので、ガンガン稼いでもらわないと困ります。2つ目は中堅どころ。人気が落ちてきてもまだ稼げるものや、ファンは少ないけどもかめばかむほど味の出るものなど。3つ目は、麻雀やパズルものなど、売り上げは少なくてもコンスタントに稼げるもの。そして、4つ目。どうしようもないもの…。

 私が以前、静電気破壊した「ぱずる玉」の跡地には、ほどなく倉庫に眠っていた「ウルトラマン」のシューティングが入りました。ヴォイスも「ヘヤ゛ァァ」「フア゛ァァ」と本物を使用、変身シーンも実にリアルに再現。最初の週、1000円。次週、500円。そして三週目、私が回収しようと箱をのぞけば、そこには100円玉が1枚…。店員としても、やり込めば実は面白ろゲーなのではないか?とか考えてプレイしてみるものの、面白くないものはやっぱり面白くないのです。 次の出番の時、その場所では「イチダントアール」が元気に稼働していました。世の中には、浮かばれないゲームもいっぱいありますねぇ。

手相

 まだ稼働してるでしょうか?手相占いマシーンというのがありました。右手を中に入れ、手相をスキャンしていろいろ当ててしまおうというアレです。「手相は刻々と変化しているから、またプレイしてね♥」ということでしたが、続編が出てないところを見ると、やっぱりダメだったのかもしれません。 それはさておき、この手相マシーン、手の置き方とか、手の丸め具合とかで結果がかなり変わってしまうのです。あーでもないこーでもないとやっているうちに、それならば最高の手相を作ってしまおうと、私は考えたわけです。早速細いマジックを用意。手相占いの本を参考に、短かかった感情線を延長、長生きできるようにと太い生命線を手首まで伸ばし、その他いろんな線をキュキュキュ~っと書き込んでスタート!これは効果抜群でした。それまでの平凡な結果から、ほぼ完璧超人に…。というわけで、無事このマシーンも攻略されたのでした。

みかん

 基本的に夕方から閉店までの夜番がメインでしたから、8時くらいに2人交代で晩飯をとります。ゲーセンのお向かいには、パッとしないスーパーがありましたから、そこで明日の食材と共にお弁当などを買います。ミカンと充実野菜も欠かせません。飯も食べ終わり、カウンタでミカンを食べおりました。「すいません、キックボタンが動かないんですけでど」「ハイハイー、今行きますよー」という具合に、ちょっと席をはずして戻ってみると、なんとミカンが減っているではありませんか!ショーーック!見回すとメダルコーナーにいる知らないオヤジがパクパクと。しかも人が作ったミカンの皮入れまで使いおって。「やいオヤジ。人のミカンを食いやがって!」と心の中で叫んでもすでに遅し…。

 次回予告:そんな平和なゲーセンに突如として現れた刺客。ふじくすに訪れた最大のピンチ!お楽しみに。

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