Eyes for Details Vol.14 - Bleem!の真実

元社員が語る過去、現在、そして未来

January 23rd, 2001
February 8th, 2001
PSXEmu

 このページを今見ている皆さんは、「bleem!」「bleemcast!」、それを作っている会社「bleem,inc.」については既にご存知のことでしょう。そして、この会社は今何をしているのか、なぜ何の情報も出されないのか、そしてあなたがお金を払った製品はどうなってしまったのか、あなたも疑問に思っている一人だと思います。残念なことに、我々もこのことについては同様に情報をつかんでいません。しかしここで、この会社の元社員が、意を決して今何が起きているのかを語ってくれました。彼は、とても長いメールを送ってきてくれました。これは是非あなた自身で読んでもらいたいと思います。

はじめに

 皆さんこんにちは。「bleem, inc.」、「bleem!」、「bleem! for Dreamcast」(以下省略して、「bleem, inc.」はbleem、PC版の「bleem!」はbleem!、「bleeem! for Dreamcast」はbleemcast!とする)は、この6ヶ月何の音沙汰も無い。そして、しかしながら、まだ多くの人が、最後に実際の製品を出した14ヶ月前からこの会社に何が起きているのか、そしてこれからの会社の予定について興味を持っていることは、私自身も良く分かっている。もちろん、bleem!からの「我々は作業を続けている」とか「完成したらリリース予定だ」とか以外のオフィシャルのアナウンスは、アトランティス大陸が海から出てくることよりもありえないのだが…私はかつてbleemで働いていた。そこを去った一番の理由というのは、彼らのビジネス手法にとことんうんざりしたから。当然、これには情報のリリースを操作するやり方も含まれている。だから、私としては、世間に出回る山ほどの噂を一掃して、自分の知っていることを共有したいと考えたわけだ。

 まず始める前に、私がこれから話すことを完全に否定したり、でっち上げだと訴えたり、さらに本当のことは何も知らない奴だと片付けてしまいそうな人がたくさんいるということを知って頂きたい。また、私の言うことが本当かどうかを確かめるために、私の連絡先を公開しろと言うかもしれない。申し訳無いが、そのつもりはない。しかし、この文章が掲載されているサイトで、ニュースをコントロールしている人たちをみなさんは信頼していると思う。そうでなければ、この類のニュースは読まないだろう。それでも私のことを嘘つきと言う人がいるのは間違い無いだろう。しかしである、「bleem!はフェイクだ…なぜならば、実機のプレステのような『紫の線』を全て失っているからだ」:P (もしこの意味が分からない場合は、こちらでbleem!の歴史を見てほしい)≪訳注:98年11月13日に出された、bleem!はフェイクだという13の理由のうちのひとつを引用している≫

Bleemcast!

 これは少し昔の話になるのは知っているが、現在のところ、bleem!の将来はbleemcast!にかかっている。そんなわけで、まずはbleemcast!の話から始めよう。一番最初に触れておきたいのはその「遅れ」である。明らかに、最初の予定よりもはるかに時間がかかっている。去年のE3では、7月16日ということだった。もちろんそれに合わせて、「今年の夏に、Dreamcastの対応ゲームが400本追加」などという広告まで出たくらいだ。しかし約束の日も、その夏もとっくに過ぎた。ところが、そのあとも彼らはリリースの日付を決定しなかったのだ。その後、インターネットなどで出回った日付というのは全くの憶測のもの。そう、EBWorldGamestopといったメジャーなサイトだって例外じゃない。GameStopについてははっきりしたことは知らないが、EBWorldはサイトの免責事項で、リリース日については、発売元から日付が得られない場合は、全力をもって推測するとしている。

 私が理解したところからすると、これは彼らのシステムの構成によるものだと思われる。彼らはリリース日がないものは予約販売の受付を始めることができないのだ。だから予約申込みをできるようにしておきたかった。つまりは、発売日を適当に作り上げたということだ。GameStopや他のゲームサイトも同様なのは間違いない。今となっては、彼らが2003年1月1日といった大事をとった日付に置き換えているのは、もう分かったからだろう。だから、こんなに時間がかかったのはbleemの過ちで、他のソースからの間違った日付を載せたサイトを責めることは出来ない。

 それでは、最初のbleemcast! Pakは一体いつリリースされるのかということになる。私自身も確かなことは分からないが、ベータ版は何ヶ月もテストされとても安定していた。もちろん、100%完璧にすることはすぐにできることではないが、私の推測する限り、その時点で極めて100%に近いものであった。私が聞いたところでは、プログラムが完了してから、ディスクがプレスされ、パッケージとなり、店頭に並ぶまで普通は約3週間かかる。だから、彼らがよほど大きな変更しない限り、やろうと思えば2月の終わりまでに出荷することはできるのだ。繰り返しになるが、これはオフィシャルなbleemからのリリース日ではない。たとえどこかの会社が予約を受け付けていてもだ。これは単なる私個人の情報に基づく推測で、もしそうするならばという話だ。

 では、新型DreamcastがGD-ROM以外で起動できなくなるということについてはどうだろう。正直な話、私にはbleemcast!にどういった影響があるのかは分からない。2、3ヶ月前にSEGAがそうするだろうという噂がたったときには、bleemではこれは影響しないだろうということで意見が一致したようだ。つまり、SEGAは実際にはMil-CDのサポートをやめないだろうという意味での一致だ。日本のプログラムでMil-CDフォーマットに依存しているものがいくつかあるからだ。最近PSXEmuのRobbiがRandy(bleemの最高技術責任者兼プログラマ)と話したときに、彼はbleemcast!の発売はまだ予定していると言っていた。だから、私はてっきりこのことはbleemcast!には影響がないんだなと思っていたのだが、これがもしかしたらあくまで憶測の2月のリリースを無理にするような、メジャーな変更のひとつになっている可能性はある。

 そして最後の噂、bleemcast!は去年のE3で発表されたように、100のゲームをプレイすることは出来ないのではないかということ。残念だがこれは真実だ。実は、これが私が新しい仕事を探し始めたきっかけでもある。Randyが彼の崇高なゴールを達成できなかったことについて責めるつもりはない。でも、100ものゲームを100%完璧にするなんてのは、とんでもないことだ。SNESやGenesisエミュレータでも難しいのに、ましてPlayStationときている。たとえ仮に可能だとしても、そのためには大量の時間が必要になるだろうということは間違いなく、そのことをきちんと公表しない彼らに、私は本当に悩まされた。先払いで既に予約をしている人もいるが、予約したはずの製品はおろか、それにも満たないものですら、手に入る目処はないのだ。bleemcast!がリリースされた暁に、彼らはそういった予約者に対してどういう対応をするのかは興味のあるところだ。値段を考慮していた人たちに対しては特にそうだ。Randyによれば、小売業者は予約を受けないように要請されたという。しかし私はにわかにこれを信じがたい。多くの信用のある有名小売店がこの要請を親身に扱うことは私には想像できないからだ。おまけに、もし私自身が小売店だったとして、bleemの歴史を知っていれば、慎重すぎるくらいにはなると思う。だからそんなときに予約を取るなといわれたら、それに逆らうようなことはまずしない。それと、EBWorldは、去年のE3が終わってほとんど間をおかずに予約を開始したが、bleemでもほとんどの人がそれを知っていた。なぜその時点でbleemはEBWorldに待ったをかけなかったのだろうか。しかし、小売店がそういわれたとしても、bleemは初期段階の問題には責任は無いだろうし、プログラムデザインの大規模な変更を公表することなく、製品を存続するだろう。そこで、bleemcast!の新しいプランとしてこんなのはどうだろう?「Pak」の形はそのままにして、単一の(そう本当にひとつだけ)のゲームをサポートするのだ。第一弾は「Gran Turismo 2」あたり。第二弾はこれといったのがないが、多くの人の話からすれば「Tekken 3」か「Final Fantazy IX」だろうか。想像するに、ひとつのゲームを完璧にするような変更は、いったんメインエンジン部分が出来てしまえばあとは時間の問題だ。ベータテストとプログラミング期間はある程度重複できるので、この新型「Pak」は3~4週間あればリリースできるだろう。とはいえ、FF9自体のテストは一ヶ月かかるかもしれないが、特別な要素も全てテストするならそれ以上かもしれない。個人的には、私が見たスケジュールの類だと信じているが…

Bleem! for PC

 つぎはbleem!について。まず、1999年に1.5Bがリリースされたあともしばらくは開発は続けられていた。1.6のbeta版には2種類あって、それぞれ異なるローダーを使っていた。ゲームによって必要なローダーが違っていたのだ。Randyのアイディアはそれらをひとつにしたいということで、つまりそれぞれのゲームでどちらかのローダーが正しいものかを探す必要があった。しかし残念なことに、彼のbleemcast!の開発はちょうどその頃、軌道に乗り始めたため、結局1.6が出ることはなかった。この2つのベータ版では、グラフィックの修正も行われていた。また新しいローダーでいくつかのゲームも動くようになっていたが、メインとなっていたのは「Gran Turismo 2」で、1.4で見られたグラフィックの不具合は解消されていたのだ。オープニングのMDEC(ムービー)はスキップする必要があったが、ゲーム自体はかなりいい出来だった。この1.6でのグラフィック修正では、他の表示されなかったポリゴンも表示されるようになっていて、「Tony Hawk's Pro Skater」での穴や、「Tomb Raider III: The Last Revelation」のLara Croftもついに表示されてるようになっていた。1.6 betaで何らかの修正がされたのは、恐らく合計で約40本くらいにあったと思う。けれども、これをリリースすることで、この一年を空白にしておくよりはずっとましだろう。特にPlayStationの超人気ゲーム2作が動作だけでも大きい。

 皆さんはPSXEmu FILL HEREでのRandyへのインタビューを覚えているだろうか。そこで彼はVersion1.6に触れて、「Gran Turismo2」、「Tony Hawk's Pro Skater」、そして「Tomb Raider III」と謎めいたことを言っていたのだ。だから私はその時点でまだそれをリリースする予定なのだと思いこんでいた。ああ、思い出すよ。DragonYen(bleemの主任テスターのニックネーム兼ユーザー名)に謝らなければいけない人が何百人もいるんだよ。彼はbleem!1.6betaで動作しているGT2のスクリーンショットを、バージョン名をv?.??にしてPSXEmuに投稿した。ところが、bleemcast!のことに気づいた人たちは、このショットはbleem!じゃなくて本当はbleemcast!のものだと言って、彼を嘘つきだと責め立てたのだ。これは、間違いなくbleem!で撮ったショットだ。DragonYenは、決してわざと人をだまそうとしたわけではないことはお分かりかと思う。もちろん彼の口から、このことを聞くことはできないだろう。彼もみすみすクビにはなりたくないだろうから(もちろん、他のbleem社員も同様だ)。だが、彼は嘘はつかない。

 それでは、bleem!の将来はどうなるのだろうか。昨年夏、Randyはbleem!以外のものとは関わりを持ちたくないようだった。彼の見解では、客はすでに現状のbleem!で$30分の価値を十分に享受したというものだ。確かに彼に同感できない部分もないわけではない。bleem!がすぐに完璧になることなどありえないのは、これがリリースされる以前から、既に分かりきったことだったからだ。そうなれば、可能な限り完璧になるまで作業は延々と続くだろう。bleem!の箱にはかつて「アップデート無料!」と書かれていた。そして、サイトにも至るところに「アップデート無期限無料!」のうたい文句があった。しかし、bleem!が完璧になるという約束はどこにもない。エミュレータというものにとっての限界にほとんど近づいているのだ。

 しかしだ、単一のPlayStationゲームならばbleem!で100%完璧にすることが出来ると私は思う。これは、決して高収益には結びつかないだろうし、多くの人がbleem!を買った当時に期待していたものとは違っているのは確かである。そしてもちろん、bleem!が完全に動作させられない人もいまだにいるだろう。 既に言ったように、昨年の夏Randyは、bleem!のユーザーは、今bleem!が持っている値段相当の価値というものを既に受けたと言っていた。それより一ヶ月も経たないころだったが、開発者の一人がbleem!で新しいゲームを対応させようとして、Randyにそのことを尋ねてみた。Randyが見にやってきて、bleemcast!ではなくbleem!でテストをしているその人に、bleemcast!でやれと言ったのだ。その理由は、彼の言葉を引用すると「bleem! for PCはバグのかたまりだ!」からだそうだ。いかにユーザーが払った代金の価値とぴったりかみ合っているか、私には理解できないだろう。

 とにかく、ここまではRandy側から見たものだ。Davidも、この会社のオーナーとしての地位はRandyと同じくらいのものがある。それでは、彼は何と言うだろう?彼は、最低ひとつでもbleem!の次のアップデートをと、本当に真剣に待ち望んでいたようだ。Randyが昨夏、その言葉を放ったときにもDavidは居合わせていた。そしてその後、彼はbleem!の開発者を分けることを真剣に考えるようになったようだ。この一件で実際に何がどうなったのかは私には定かではないが、私の知る限りでは、その後何も起こらなかった。

 最後に私がDavidから聞いたことは、Randyはbleemcast!に一旦目処がつけばbleem!の作業に戻るということを決めたということだ。しかし、よく考えてほしい。まだDreamcastに移植されていなくて、エミュレーションする価値のあるPlayStationゲームが50本はあるとして、楽観的にみて一本仕上げるのに3週間かかるとみても、全部を完全に対応させるには3年かかるのだ…その頃でもまだ山ほどの人がbleem!に興味を抱いている、とは考えにくい。 Davidがひとつ指摘していたことがる。もし今1.6をリリースしたとしても、大抵の人は1年もかかってなぜこれほど改良点が少ないのか不満に思うだろうということだ。もちろん、実際に作業された時間は、1年ではない(v1.5Bのリリースから、確か2ヶ月くらいでv1.6betaが完成したはずだ)が、いずれにしても不満が寄せられるのは間違いない。もちろん、このことを言い訳に使ってもかまわないだろうが。

 そして最後にbleem!について。皆さんがbleemcast!の「Pak」というアイディアを最初に見たとき、bleem!も同じ路線でいくのではないか、もしそうなら、フリーアップデートはどうなってしまうのかと思っただろう。RandyはPC版についてはまだ決めていないとbleemの掲示板で語っていた。これは今でも真実なようだ。たとえDavidが次のPC版を作ったとしても、実際にそれがもう存在したとしても、Pakフォーマットとなりそうだ。

 そして、新しい製品として発売され、フリーアップデートは適用されないと思われる。もちろん、まだ出ていないのだから、最終的にこうなると決まっているわけではないが、今の段階ではこうなる可能性は極めて高い。

 というわけで、bleemcast!は期待通りのものにはならず、bleem!の未来もいまだ完全に宙ぶらりだ。これはユーザにとってだけではなく、会社自体にとっても言える。残念なことに、あまり良いニュースではないが、いずれにせよニュースではある。というわけで、一番大事な人々は客であって(そしてそうあるべきで)、何がどうなっているのかを知る必要がある。

最後に

 最後にこれだけは言っておきたい。この文章を読んだ人の多くは動揺しているものと思う。また、bleemに文句を言おうと思っている人もいると思う。しかし、社員のほとんどもあなたと同じものを感じていることを覚えておいてほしい。会社をどうするか最終的に決定する力を持つのはDavidとRandyだ。たまには決定事項について社員がどう思っているか尋ねてくることもあったが、意見はまず無視された。だから、それは実際には重要ではなかったのだ。コミュニケーションディレクターがもっと自己主張が強くして、DavidとRandyにもっと情報を出すように促すことも出来ただろうが、結局は彼らの決定に従うしかないのだ。無礼な言葉で申し訳無いが、「bleemチームは全員、最後にはホームレスになって、ゴミ箱をあさって腐ったものを食べてじわじわと死んでくれ」などという言葉を見るのに私は本当にうんざりした(これは実際にある掲示板に書きこまれていたものだ)。こういうことは何よりも辛いものだが、自分の仕事しかしない人の指示に従うことにはなおさらそう感じる。彼らと接するときに、もしあなたがあたなが完全なバカではないのに、筋の通った返答が得られない場合は言うまでもない :p

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