Eyes for Details Vol.13 -リバースエンジニアリングの是非【後編】

不可欠な技術か、違法行為か?

January 23rd, 2001
Original Text by Karen D. Schwartz
Planet IT

 しかし、そうならない可能性もある。2001年夏に裁定される予定の新しい議会法である統一コンピュータ情報取引法(UCITA)では、最終的にSONY対Connectixのようなケースにもプレッシャーをかけるものになるかもしれない。だが、それでも欠点は残るだろう。UCITAの草案は、異なったパーティーによるソフトウェアなど、無形の製品を政府が使用する場合についての対処を求めたものだ。UCITAは、最低でも現在の法律規定の形態ではリバースエンジニアリングの問題について強い位置付けはされていない。現状、UCITAはライセンス事項で明記された範囲か、リバースエンジニアリングには全く触れていない場合、そのライセンスされたソフトウェアに対して、リバースエンジニアの認可を与えるというものである。

 さらに、UCITAが解決しなければならない疑問として、ソフトウェアのライセンス条項のうちリバースエンジニアリングを禁止している部分が、法的強制力をもつのかということがある。このことは、SONY対ConnectixとDCMAで示されたように、公益とは逆らう動きをとる傾向があるからだ。

「UCITAの元でも、ソフトウェアデザイナやメーカーは使用規約の禁止事項を通じてリバースエンジニアリングを制限していくだろうと思う」とHangartner氏。「法的強制力についても、たぶん比較的早い時期に議会で可決されるだろう。その時までは、実際にはリバースエンジニアリングについては誰にもわからないと思う。」

DMCA自体の矛盾

 例のユニバーサルスタジオ対Shawn C. Reimerdes氏とのケースは、DMCAを基準にした初期の判決としてその悪名と共に広く知れ渡っている。Reimerdes氏は、DVDのプロテクトをはずすDeCSSを自分のウェブサイトで公開した人物だ。ユニバーサルスタジオに有利な判決を下したニューヨーク地裁は、このケースの場合、DMCAは合衆国憲法の言論の自由には矛盾しないことに触れている。SONY対Connectixの裁定は明らかに競争を促進して、フィールドを広げるものだが、ユニバーサルVSReimerdes氏のものは、潜在的な競争の可能性さえ閉ざしてしまった。しかし、どちらのケースもそれぞれの特徴をもっているため、比較の範囲は限定されるだろうと語るのは、ワシントンD.C.で約1,200の情報・ソフトウェア系会社からなる事業者団体で、知的所有権のカウンセリングを行っているKeith Kupferschmid氏だ。

「Reimerdes氏の場合は、DVDに対する権利を持たない人でも、そのコードを手に入れてクラックすることを扱ったものだ。それに対しConnectixの場合は、会社が相互運用の目的でコードを利用してリバースエンジニアする場合の法的権利のあり方に対処したケースだ」と彼は説明する。

 一般には、リバースエンジニアリングの利用について2種類の正当な理論がある。異なったシステム同士での統合をスムーズにため、そして運用時にシステムが周囲に損害を広げないことを確実にするためだ。こう語るのは、マサチューセッツ州の技術コンサルティング会社Forrester Researchで、インフラセキュリティー管理の上級アナリストを務めるFrank Prince氏だ。

 Prince氏によれば、その一方で非合法な理論で会社がリバースエンジニアリングをすることもよくあるはずだとしている。

「彼らは、最初の開発にかかった全コストをかけることなく、その製品をより良く、より安く、より速くできる可能性があれば、それがどうなっているのか、どういうことをするのかということを解き明かせるかどうか考えている」とPricce氏。「彼らの側からみたこのような理論にあなたがどう感じるか、そして、あなたは損得どちらの立場にあるのか。結局前と同じように、努力から利益を得ることや、創造物に対しての責任ということの争いで終わってしまう。」

リバースエンジニアリングの将来

 裁判所の判断がどうあれ、ソフトベンダーと顧客の両方がその値打ち分を支払うことになるだろうと、専門家は見ている。

 リバースエンジニアリングを制限、または禁止するこれらの法律、そして開発のために必要な、合法的とされるリバースエンジニアリングを許可する法律も同様に、結局は競合製品についての情報を得るための選択肢を狭めてしまうだろう、とHangertner氏は言う。強力なリサーチツールや開発ツールが無くなってしまえば、これらの法律は結果的に開発コストを上げ、革新の頻度も遅くなるかもしれないと彼は考えている。

 しかし、技術開発者の立場から見れば、このような制限はむしろ前向きに見られるかもしれない。なぜならば、これが模倣者からの、彼らの発明に対するを報酬を保証するものとなる可能性があるからだ。 「開発者は、リバースエンジニアリングを彼らの技術流出の元であり、模倣者は彼らが費やした研究開発費にただ乗りしていると見ている。」Hangartner氏はこう付け加えた。この問題はこれから数年間、熱い議論を呼ぶだろうと彼は見ている。

 とはいうものの、多くの人はSONY対Connectixのような裁定で、リバースエンジニアリングを取り巻く問題はすでにクリアになったと考えている。競合相手の成功のためにさらなる解明が必要だと思っている人たちもいるくらいだ。

「Connectixのケースでは、裁判所は別な見解を出し異なった基準を決定した。だからこれが現実に他の判例にも影響していくだろう。これはリバースエンジニアを行う側とされる側の双方にとって痛手となるだろう。なぜならば、どこまでが正当で、どこからが不当かという争いはこれからも絶えないだろうからだ」とKupferschmid氏はこう主張する。

「それぞれの会社が、やっていいことといけないことの線引きを知り、それをもとにしたビジネスモデルをきちんと作れるような決定的な基準があるほうがむしろ良いと思われる。現在のような不完全な基準のもとでは、どんなビジネスモデルに進むこともさらに困難になってしまうのは間違いない。」

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