October 13th, 2000
BBC NEWS Online
物置で埃をかぶっているような1980年代のコンピュータが今、インターネットを通じて復活してきている。最近の高速PC環境によって、このようなコンピュータが「エミュレータ」というかたちで息を吹き返してきているのだ。しかし、以前BBC News OnlineのDarren Watersがレポートしたように、法的な問題もはらんでいる。
ZXスペクトラムやBBCマイクロといった単語を聞いて、まったくちんぷんかんぷんか、それとも懐かしい郷愁の念を持つかはあなたの年齢によるだろう。
もしあなたが20代後半から30代後半の方なら、かつてホームコンピュータを席巻したシンクレア・スペクトラムやBBCマイクロ、コモドール64、ドラゴン32といったマシンを覚えているだろう。
ホームコンピュータが低価格マイクロコンピュータの登場により、市場に一気になだれ込むという革命があったのは20年前のことである。
このようなマイコンは既に時代遅れと見られているかもしれないが、物置を掻き回すことなくこれらの命を吹き返えさせることもできる。エミュレータというものを通して。
コンピューティングの歴史
現在インターネットで急成長しているエミュレータとは、80年代のコンピュータや古いソフトを動作させるのに必要な機能をパソコン上で擬似的に行うプログラムのことである。
『ドンキーコング』『Jet Set Willy』『Horace Goes Skiing』など今となっては絶滅した恐竜のようなゲームも、今ではレトロゲームとして知られ再びプレイすることができるのだ。
実際ネット上では、こういったゲームやエミュレータをダウンロードできるサイバーカルチャーが急成長中である。
「私に連絡をしてくる人というのは、若い頃に好きだったあのゲームをもう一度やりたいという場合がほとんどです」とは、ドラゴン32エミュレータの作者でオールドコンピュータ関係のWebサイトを開いているPaul Burgin氏。
「エミュレータというのは最新技術に関わりながら、コンピュータ史も押さえておける一番手っ取り早い方法だと思います。また、コンピュータ遺産というものを保存する方法としてもとてもすばらしいものです。エミュレータは擦り減りません。置き場所も取りませんし、埃もかぶりませんから」
法的には不透明な面も
しかし、サーチエンジンでエミュレータを探す前に以下のことにも気をつけなければいけない。場合によってはPCでオールドコンピュータをエミュレートしたり、オールドゲームをプレイすることは違法であるということだ。
「私は法律家ではないが、1980年代からの著作権は今でも有効だと思う」と前出のBurgin氏は続ける。 「しかし、著作権がインターネットに大量のソフトが現れることを止める材料にはなっていない。」
ソフトウェア著作権保護と強化を行っているヨーロッパレジャーソフト協会(ELSPA)の主任調査員、Terry Anslow氏は「このようなゲームをインターネットからコピーすることは犯罪行為である」と語る。
「コンピュータシステムやゲームをエミュレートすることは明らかに無許可の商標再利用であり、知的所有権の侵害だ」
権利の放棄
しかし、エミュレータ推進キャンペーングループ「CLEAR」は、これらの多くのゲームは既に市場的には入手困難で、また多くのソフトハウスも無くなってしまっている。さらにそれらのプログラマー自身も、多くは彼らのゲームが人々に楽しんでもらい続けることを望んでいると主張する。
あるエミュレーション推進サイトでは、50人以上のプログラマーが彼らのゲームをエミュレータで使用することを認めている。
BBCマイクロ用クラシックゲーム『Elite』の共同作者Ian Braben氏は、彼のサイトでEliteをダウンロードできるようにしている。
コモドール64やアタリSTコンピュータのプログラマーであったJeff Minter氏もまたオールドゲームの著作権を放棄した一人である。
Anslow氏はこれに対して「まだどこかに著作権者がいるはずだ。コピーするということは他の犯罪と何ら違いはない。デジタル時代だからといって、それが何でも手に入ることを意味するわけではないのだ。」
しかし同時に、Anslow氏は著作権が放棄されているのなら、犯罪性はないことも認めている。
店から姿を消しても
スペクトラムの著作権所有者であるAmstrad社は、エミュレータを通じてユーザーがコンピュータを「復活」させることに完全に満足している。
「当社のオールドコンピュータがエミュレートされ、Amstrad/シンクレアブランドがこれからも生き続けることは何よりも喜ばしいことだ」と、Amstrad plcの主任ソフトデザイン技術者Cliff Lawson氏は語る。
しかしながら、彼も指摘するように、「エミュレートされたスペクトラム上で走らせるソフトを持ち得ないということはまず有り得ないわけで、そこがエミュレーションにおけるグレーゾーンとなっている。」
アメリカに拠点を置き、Web上のセキュリティーパトロール活動を行っているインタラクティブデジタルソフト協会では以下のように指摘している。「ゲームの著作権は、たとえそのゲームが店の棚から無くなったとしても依然として有効であり、コピーしたり配布することは著作権違反である。」
同協会ではまた、著作権の有効期間はアメリカ国内では最低75年間有効で、「クラシックゲーム」をプレイすることはノスタルジアなどではなく単なる犯罪であり、著作権を犯しているサイトがあれば閉鎖しなければならないとしている。
現役のシステムでは
このように古いゲームであるにもかかわらず、あるサイトでは2ヶ月の間に200万ものゲームがダウンロードされたと自慢している。また、World of Spectrumというサイトでも毎日6万のゲームがダウンロードされているという。
残念なことに、このようなサイトの中には、PlaystationやNintendo64など今なお現役のシステムをエミュレートすることで、これらの会社やプログラマーの収益を脅かしているところもある。
仮想版オールドコンピュータの再現を待ちわびている人にとっての経験則としては、まず特定のコンピュータをエミュレートすることが合法であること、そしてお気に入りのゲームを著作権を犯すことなくプレイできるか確認することである。
この2つの要件を満たして初めて、PCはあなたを1980年代へと連れて行ってくれるだろう。