May, 1997
インタビュアー:Chris Knape
Knaper's MacMAME Info Depot
Brad氏は、Wintel用アーケードエミュレータMAMEの移植版、MacMAMEの作者です。
CHRIS KNAPE:まずお聞きしたいのですが、Bradさん自身のことについて教えて下さい。どのように生計を立ててらっしゃるかとか、プログラマーとしての背景などについてお願いします。
BRAD OLIVER(以下Bradman):今はここTempeにあるモトローラに勤めていて、MacやPCのトラブルシューティングやバグ修正をしています。それからASU(アリゾナ州立大学)のパートタイム学生もやってます。
プログラミングを始められたきっかけは何ですか?それと、なぜMacOSでのプログラミングを選ばれたのでしょう。他のOSやプラットフォームで作業することはありますか?
Bradman:プログラムを始めたきっかけは、僕が中1のときに親に買ってもらったApple II にまでさかのぼります。それ以来Apple製品にはまってしまって... もちろんWindowsでのプログラミング経験もありますが、Win32 API についてはほとんど忘れてしまったかな。
Bradさんのプロジェクトにも関係があると思うのですが、AppleのこれからのOSプランである、OS8やRhapsodyについてはどのようにお考えですか?
Bradman:新しいアピアランスマネージャーの機能は、MacMAMEでフルにサポートしていきたいですね。Rhapsodyについては、もちろん私自身は移植したいと思っていますが、こればかりは時が経たないとなんとも言えないですね。リリースまで最低でもあと1年はかかるでしょうから。
MacOS用で、特にエミュレータなどの質の高いゲームを作る際のこつがあると思うのですが、あなたの視点からみて、これといった強みとか弱点とは何でしょう?
Bradman:Macで面白いゲームを作るには、芸術的センスとプログラム技術のバランスが重要だと思います。それから、Macユーザーが求めるインターフェースをきちんと踏まえたプログラムを書く能力も必要です。あるMacユーザーから、「編集」メニューの項目の順番が違うという、何とも重箱の隅をつつくようなメールをもらったことがあります。全てのアプリケーションで同じような操作感を期待しているってことなんでしょうけどね。でもとりあえず、現在のMacMAME 23.5ではApple標準の「編集」メニューの配置とは違うんですよ(笑)
MacMAMEに関わるようになったきっかけは?
Bradman:www.emulation.netにあったDavid Caldwellって人が作った「MacMultiPac」というのを大変気に入りまして、コードが配布されていたArcade Emulation Programming Repositoryに行ってみたんです。そこで、NicolaがちょうどPC用のMAMEをリリースしたのを知って、Mac用も一丁やってやろうかってことになって、気がついたらMacMAMEが出来ていました。
MAMEのどの辺に惹かれましたか。それと改良していきたいところはどこですか?
Bradman:すごく多くの人が、コードの高速化や最適化に貢献してくれているのをとても誇りに思っています。ソースをパブリックドメインにしたことで、みんながそこから学んで、またフィードバックしてくれるのがすごくうれしいですね。改良したいことと言えば、キーボード設定です。今のところDOS版と全く同じなので、Macだと少し使いづらい面があります。それから、MacMAMEはそれぞれのゲームでのパレットの扱いがとても貧弱で、今のバージョンでは白色と黒色がよくごっちゃになるんです。
MacMAMEにはどれくらいの時間を費やしていますか?
Bradman:一週間のうちに時々っていう感じです。自由な時間ができたり、アイディアが思いついたときには大抵、コードをいじくっています。
お気に入りMacMAMEゲームは何ですか。どのくらいプレイしますか?
Bradman:うーん、今まで秘密にしてきたんだけど、実はMr.Doが気に入ってます。MacMAMEが出来るまではやったことがなかったんですよ。それから、Galagaにもはまってます。Froggerや、Amidarや、Crayzy Climberと並んで、マイブームのひとつです。
まだサポートされていないゲームでぜひMacMAMEでやってみたいものは?
Bradman:ズバリ、Dig DugとBattlezoneです。
MacMAMEのReadMeファイルでは、「Tempest」や「Battlezone」など、人気の高いAtari製ベクターゲームのコードについて触れていますけど、これらのサポートについてはどのようになっているのでしょう。
Bradman:徐々にですね。今のところ、MacMAMEか、または特別なMacMAMEベクター専用版のような形のどちらで実現できるかははっきりしていません。PC版の管理者であるMirkoは、後者のほうに傾いています。ですから、早めに何らかの形で出せるでしょう。いずれにせよ、ベクターゲームは動きがスムーズで高速ですからね。できるだけ早く実現したいと思っています。
MacOS版の方で先に「Jr. Pac-Man」と「Pac-Man」が先にサポートされたのを見てちょっとうれしかったのですが、これからもこの流れでいくつもりですか?あなたにとっての重要度は?
Bradman:Macユーザーにはこういった「おまけ」みたいなものをいつもつけていきたいと考えています。特にPC版とMac版のリリースラグがあるときはそうですね。ネタがある限りはPC版にはないものを追加していきたいと思っています。
Usenetではよく、ずっと音楽がサポートされていないゲーム(ZaxxonやWizard of Wor)について文句を言っている人がいるようですが、これらのゲームの完全サポートを難しくしているものは何でしょうか?
Bradman:未サポート機能を追加するのに必要なのは情報です。例えば、このサウンドチップはこのゲームではどのように動作しているかなどです。同じチップでもゲームによっては担っている機能が異なることがあって、これらの違いがはっきりしないかぎりサポートできないですね。
NicolaやMirko(Wintel版Mame管理者)とはどれくらい親密に作業しているのですか?
Bradman:非常に時間を費やしていたはじめの頃は、MAMEでまだサポートされていないゲーム用ドライバを追加するために、Nicolaとはとても緊密にやってました。MAMEのような他のエミュレータをMacに移植するのは面倒ですからね。最近はMircoとチャットで、このバグがどうしたとか、この機能はどうだとか、よくやりとりしています。2人とはともにうまくやっていますよ。
MacMAMEの進化には、あなたの才能が幅広く生かされているように感じるのですが、どのくらい自分自身でプログラムをして、またどのくらい他人の手に頼ってるのですか?
Bradman:最近ではそれほどでもないですが、出来るだけ自分でやるようにしています。皆さんが送ってくれたものは、MacMAMEのコードに合うものならほとんど採り入れています。
MacMAMEのようなエミュレータが、ROMといった著作物が必要になるということで、神経質になっている人がいるということはないですか?MacMAMEやインターネットでダウンロードできるROMを使う際に注意すべきことはなんでしょう。
Bradman:実物のアーケード基板をもっていないと、ROMを所有することは違法になってしまうということを覚えておかなければいけませんね。オリジナル基板を所有することだけが、ROMを所有する唯一の手段だと思います。それとか、Williamsゲームのように売り物のWiliamsエミュレータを持つことももしかしたらいいかもしれません。
MacMAMEを売り物にしないのはなぜでしょう。興味やライバル心を示している会社は無いんですか?
Bradman:MacMAMEを売るということには全く興味がないです。こういったクラシックゲームを残して、次の世代でもソースコードを利用できるようにすることだけですね。どこかの会社から話しを持ちかけられたことは、全くありません。
Nemesisエミュ(Brad氏作のもうひとつのアーケードエミュ)のこれからの予定は?MacMAMEにはなぜ組み込まないのでしょうか。
Bradman:Nemesisのサウンドがサポートされるはまだ先になりそうです。MacMAMEに統合していないのは、68000CPUがずっと複雑だからなんです。Macintosh Plusなどの初期型MacのCPUと同じものですからね。MacMAMEにうまくフィットするとは思えません。
最近、参加されている他のプロジェクトはありますか?
Bradman:最近ではSega System16エミュレータだけです。とりあえず動いてはいるのですが、完成には程遠い状態ですね。きちんと動作させるには、まだまだIntel用のアセンブリ言語を大量にトランスレートしなければいけません。
他のタイプのゲーム、エミュレータでもそうじゃなくても構わないのですが、やったりすることはあるのですか?もしあったらお気に入りのタイトルは何でしょうか。
Bradman:Ultimaシリーズは本当に好きですね。Macに全部移植されてくれればうれしいんですけど、たぶんないでしょうね(笑)。Warcraft2や、Dark Forces、それからMarathon2にもはまりました。それから、Sierraのゲームも好きなんですが、Mac版でも初期の移植ものはあまり出来がよくなかったですね。LucasArtsモノもいいですね。ただ、なぜMacのサポートをやめてしまったのかはわかりませんが。Macにとってはいい活力になると思うんですけどね。
どうもありがとうございました。